Event Report
2025.07.09 UP
【Hollywood Report】もうすぐSIGGRAPH2025 見どころを分析

鍋 潤太郎 / Inter BEEニュースセンター
夏と言えばSIGGRAPH。SIGGRAPHと言えば夏。多くのVFX/アニメ/ゲーム業界の皆様にとって、これについて異論はあるまい。
今年のSIGGRAPH2025は8月10日(日)〜8月14日(木)の5日間に渡って、カナダの彼方(爆)、バンクーバーにて開催される。
なぜバンクーバーでの開催なのか?バンクーバーは、カナダのブリティッシュ・コロンビア州が推し進めるハリウッド産業に対するTAXクレジット(税制優遇)の制度があり、その恩恵によってVFX産業が盛んな地である。その地での開催というのは、頷ける話だ。
バンクーバーで初めてSIGGRAPHが開催された2011年には、「初めてアメリカ国外で開催されるSIGGRAPH」として大変話題になったのを覚えているが、そんなバンクーバーでの開催も、2011年 / 2018年 / 2022年、そして今年の2025年と、早いもので4回目となる。
では、そんなバンクーバーでのSIGGRAPH2025の見どころを予習してみる事にしよう。
渡航前&滞在中に、スケジュールを検討する際の参考用にご活用頂ければと思う。
※このコラムで紹介されている内容は2025年6月末現在の情報である。また、最新情報はSIGGRAPH2025公式サイトや、フルスケジュール・ページをご参照あれ。
※以前、筆者の友人に、パスポートの期限切れに気がつかず、SIGGRAPH旅行をキャンセルされた方がおられた。パスポートの更新には1週間程掛かるので、念のため今すぐパスポートの有効期限をチェック!
読者の皆様の中には、「シーグラフ(SIGGRAPH)」をよくご存知ない方も多い事だろう。ここで、そもそもSIGGRAPHとは何か?を、ここで分かり易くご紹介させて頂く事にしよう。
SIGGRAPHは、毎年夏にアメリカで開催される、コンピュータ・グラフィックス分野の世界最大の国際コンベンションである。正確には国際学会および展示会なのだが、連日映像作品の上映やVFXメイキング講演、ユーザー・イベント、パーティ等が開催される事もあり、その楽しさや華やかさから「祭典」的な存在としても知られている。
国際学会の性質にふさわしく、大学の研究者や、ハリウッドのVFX現場で開発された最新技術の論文発表も行われ、ここで公開された論文が、最新ハリウッド映画やゲームの技術に応用される事例も少なくない。アメリカのCG・VFX界では「情報共有」の考え方が浸透しており、こう言った最新技術を惜しげもなく公開し、みんなでシェアしていこうという姿勢が見られる。その姿勢はオープンソース等に代表される業界標準規格にも通じるものがある。また、CG・VFXそしてAI関連の最先端技術の論文発表や、VFX作品のメイキング講演、エレトリック・シアターに代表される映像作品の上映など、魅力は満載である。
SIGGRAPHの歴史は古く、第1回は1974年にコロラド州の都市ボルダーで、参加者わずか600人で開催された。参加者数及び出展者数のピークは1997年のロサンゼルス開催で、参加者48,700人に出展社539。それからは徐々に規模が小さくなり、ここ数年は参加者11,000~14,000人前後、出展社数は100前後を推移している。2019年のロサンゼルスは参加者18,700人と、ここ10年間では最大の参加者数を記録したものの、それでも最盛期と比較すると3分の1程度に留まっている。
また昨年の2024年は、デンバーという開催地が影響したのか、参加者は8,800人と、例年の6割程度であった。今年はバンクーバーでの開催なので、11,000人前後の規模の参加者数が見込めるのではないか?と筆者は予想している。
SIGGRAPHは、毎年開催地を変えて実施され、過去にはボストン、シカゴ、フロリダ、ダラス、サンアントニオ、サンディエゴ、そしてラスベガス等の全米各都市で開催された事もあった。しかし近年は規模縮小の影響もあってか、CG&VFXが盛んなロサンゼルス近郊やカナダのバンクーバー等で開催される事が多い。
SIGGRAPHでは「この場に来ないと見れない、門外不出の映像」が公開される事も少なくなく、著作権の関係でバーチャル参加では公開されていない極秘映像の数々を見る事が出来る。また、SIGGRAPHの場で憧れの業界著名人とお話しが出来たり、実際にVFXを制作した著名VFXスタジオのスーパーバイザー等によるメイキング講演が生で聴講出来るのは、大変貴重な経験となるだろう。
また、コロナ以降のSIGGRAPHでは、「現地視察」(In Person)と、「バーチャル参加」(Virtual)のハイブリッド開催が定着しつつあり、忙しくて現地へ行けない方にも便利である。
関連&参考用記事:
鍋 潤太郎☆ハリウッド映像トピックス SIGGRAPHトリビア(2021年8月)
会場のコンベンションセンターはバンクーバーのダウンタウンにあり、多くの方はダウンタウン近郊のホテルに宿泊される事と思われる。
バンクーバー国際空港(YVR)からダウンタウンへの移動はいくつか方法があるが、信頼できる消息筋によれば、スカイトレイン(SkyTrain)と呼ばれる電車を利用するのが便利だという。ダウンタウンまで9ドルほど、25分程度で乗り換え無しで移動が出来る。
詳細はこちら
荷物が多い方、観光も含めいろいろ車で巡りたい方は、レンタカーを借りるのも楽しいだろう。
SIGGRAPH2025公式サイトには、プログラムやイベントが一望出来るフルスケジュールというページが用意されている。フィルター機能が充実しており、興味のあるプログラムだけを全日程表示してくれるなど、便利で使い勝手が良い。
このページを参照すると、行動予定が立て易くなる事だろう。
SIGGRAPHでは様々なイベントや講演があるが、入場するにはチケットの購入が必要である。チケットには複数の登録レベルがあり、チケットによっては入場出来ないプログラムもあるので、注意が必要である。
SIGGRPAH2025のチケット&レジストレーション情報はコチラから見る事が出来る。このページには、登録レベルによるアクセスの違いも明記されている。
チケットは、大別すると下記の4種類の登録レベルがある。事前に前述のフルスケジュールを確認した上で、購入するチケットを決めると良いだろう。
さて、今年で開催52周年を迎えるSIGGRAPH2025だが、今年はどんな見どころがあるのだろうか?
ひとくちに「見どころ」と言っても、参加される方の専門分野や職種によって着目点が異なると思うが、ここではVFX関係者のが興味を持ちそうな分野を、筆者の独断と偏見に基づき、ピックアップしてみた。
毎年、ゲスト・スピーカーによる基調講演が行われるKeynote Presentations。
詳細はコチラ
会期中の火水木の3日間(8月12日~8月14日)に渡って開催されるのが、機器展。
ここでは、さまざまCG/VFX関連のソフト&ハードの最新動向を見る事が出来る。会期中に一回りするだけで、今年のトレンド、各分野の勢い、そして大人の事情などがひととおり把握出来る場でもある。ここ数年の機器展は縮小傾向にあり、ブースにおけるプレゼンテーションなども一時期と比較すると控え目となっている。
しかしながら、最新バージョンのデモや、ユーザー事例のプレゼンテーションなども行われ、人気アプリケーションのTシャツやバッチ、ノベルティ・グッズなどをゲットするのも楽しみの1つだ。
出展企業の一覧&フロアプランはこちら。
シーグラフの数あるイベントの中で、とりあえず外せないのが、このエレクトロニック・シアターである。著作権の関係でネット上では公開されないようなレアな映像も多数含まれ、まさに必見である。現地鑑賞および、バーチャル鑑賞が出来る。
参考記事:
鍋 潤太郎☆ハリウッド映像トピックス 『SIGGRAPH 2024 Electronic Theaterの入選21作品を一挙紹介』
※フル・コンファレンスの現地視察には、エレクトロニック・シアターのチケットが価格に含まれている。また、バーチャル参加の場合は、登録時に追加料金なしでバーチャル・エレクトロニック・シアター・チケット1枚が含まれる。それ以外の登録レベルの場合、エレクトロニック・シアターのチケットは別途購入する必要があるのでご注意。購入方法についてはコチラのページをスクロールダウンし、後半部分の左側下の方にある「Electronic Theater Tickets」をご参照あれ。
備考:SIGGRAPH事務局からの公式情報によれば、前述のプロモーション・コードを活用すれば、世界中どこからでもエレクトロニック・シアターをバーチャルで鑑賞出来るチケットを、単体で購入することが出来るという。
① コチラのページをスクロールダウンし、後半部分の左側下の方にある「Electronic Theater Tickets」の項目から[VIRTUAL TICKET]をクリック
② 上記のプロモーション・コードSIGGRAPHSAVINGSを使って機器展(Exhibition)で登録。
③ すると、機器展(Exhibition)が無料になる。
④ この登録レベルで、エレクトロニック・シアターのバーチャル鑑賞チケットを購入する。
これは2016年より始まった『VRビレッジ』を、更に発展させた『没入型パビリオン(Immersive Pavilion)』として2018年に生まれ変わったもの。バーチャルリアリティ(VR)、拡張現実感(AR)と複合現実感(MR)の最先端情報を垣間見る事ができるショーケースとして開催される。Immersive Pavilionの詳細はコチラ。
※エクスペリエンス、フル・コンファレンスのチケットが対象
SIGGRAPH2017から2024年まで続いたVR Theaterが、新しくSpatial Storytelling(直訳すると空間的ストーリーテリング)に置き換わる模様だ。
これまでのVR Theaterは世界中から寄せられた応募作品の中から厳選されたVR作品を鑑賞できるシアターだったが、今年の新企画「Spatial Storytelling」では、クリエイター(=各作品の発案者や原作者)中心のショーケースとして、VR、AR、XRの実践的オンデモンストレーションに重点を置くという。従来のVR Theaterに代わって、クリエイターが制作プロセスを解説し、没入型体験、ハードウェア、パフォーマンスについてプレゼンテーションを行う予定。詳細はコチラ。
ここでは、最先端技術をハリウッド映画や長編アニメーション、動画配信作品などのVFXプロダクションに応用したプレゼンテーションが行われ、毎年かなり見応えのあるVFXメイキング講演が聴講出来、まさにVFX屋必見である。大人数を収容可能な大きなホールで開催され、開演前には入場を待つ長い列が出来る事も。
過去数年のプロダクション・セッションでは、AIをVFXのプロダクションに応用した事例なども紹介されており、今年もAIやバーチャル・プロダクション、ボリューメトリック・キャプチャーの使用事例などが紹介される事だろう。
※フル・コンファレンスのチケットが対象。また、バーチャル・アクセスにも対応している。
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各分野の舞台裏やアイデアを披露する「トークス」も、VFX関連の面白いプレゼンテーションが聴講出来る。内容はプロダクション・セッションに近いが、会場は大ホールではなく客席100人くらいの規模で行われ、VFXメイキングや最新テクノロジー、XR、AIの応用など、掘り下げた内容で盛りだくさんである。
※フル・コンファレンスのチケットが対象。また、バーチャル・アクセスにも対応している。
詳細はコチラ
国際CG学会としてのSIGGRAPHで、毎年さまざまな研究開発の成果が論文として発表されるのが、このTechnical Papersである。
プロダクション・セッションにおけるVFXメイキング講演の中でも、「何年のSIGGRAPHで発表された論文のテクノロジーに基づき開発」という記述が見られるなど、Technical Papersの発表はハリウッド映画のVFXやアニメーションのクオリティ向上、そしてデジタル・テクノロジーの技術革新などに大きく寄与している。
特に、研究者の方、そして開発に携わっておられるエンジニアの方は、要チェックであろう。
詳細はコチラ
JOB FAIRは、全登録レベルの現地視察チケットが対象である。
SIGGRAPHでの就活やジョブ・リサーチを予定しておられる方は、是非こちらへ。リクルーターとコネクションを作れるチャンスの場でもある。実際、このJOB FAIRを通じてポジションを獲得した人は少なくない。
今年は、8月12日(火)と13日(水)という2日間の開催が予定されている。
備考:
JOB FAIRのサイトでは、英語圏でのResumeをどのように作成すれば良いのか分からない方の為に、プロフェッショナルなResumeを作成出来るWEBツールが用意されている。また、Resumeを事前に登録しておく事も出来る。詳細はJOB FAIRサイトをスクロールダウンし、Submit Your Resumeの項目をチェック!
詳細はコチラ
また、事前に書籍「ハリウッドVFX業界就職の手引き」を読んで海外就活の予習をされておく事を、お忘れずに!
SIGGRPAHへ参加したい熱意はやまやまだが、上司を説得し、勤務先からお金を出してもらうのが大変なのは、万国共通のようだ。
そんなアナタの悩みにお答えすべく、SIGGRAPHは、上司を説得する文面のサンプル・レターを用意している(笑)
その名も、「Ask Your Boss」。リンクはコチラ
このテンプレートを、必要な箇所だけ書き換えて上司に提出すれば良いという、優れものである。
しかも、現地参加、バーチャル参加の両方のサンプル文面が用意されており、気が利いている。
これを自動翻訳で日本語レターに変換すれば、日本でも活用可能であろう。
Good Luck!
SIGGRAPH の開催期間中、他の提携組織との協力により、同時開催イベントが行われる。
同時開催イベントの登録料は別となっており、それぞれのサイトから申し込む形となる。
◇DigiPro2025
8月9日(土)開催
DigiProは「デジタルプロダクション・シンポジウム」の略で、VFX、アニメーション、インタラクティブ分野の 世界トップクラスのアーティストやスタジオが集結し、アーティスト、科学者、エンジニア、プロデューサーが映像制作に革新をもたらすアイデアやテクニックを共有する。
会場:Fairmont Hotel(コンベンションセンターから徒歩17分)
詳細はコチラ
SIGGRAPH視察の後、夜はバンクーバーの街へ繰り出し、軽〜く1杯行きたいところ。
生ビールで乾杯。これ以外に、海外視察の醍醐味はないと断言出来るだろう(なんだそれ)
下記はバンクーバー在住の日本人VFXアーティストの方から頂いた、お勧め最新情報である。
・Guu with 男前
https://guu-izakaya.com/location/#Otokomae
コンベンションセンターより歩いて10分程度の場所にある、ガスタウン店。ここ以外にも複数の系列店あり。
居酒屋さんだが、お昼のランチは豊富な定食メニューなども多い。
・亀井Royal
https://www.kameiroyale.com/
天ぷら、お寿司、お蕎麦、和牛すき焼きまである、亀井系列と呼ばれる日本食レストラン。
コンベンションセンターからも近いロケーションに位置する。
・金魚
http://www.kingyo-izakaya.ca/
神戸牛の石焼などユニークなメニューが多い。ランチタイムの幕の内弁当が人気。
・ジャパドッグ
https://japadog.com/
バンクーバー発祥!和風ホットドッグの有名店。
・Miko Sushi
https://www.tripadvisor.ca/Restaurant_Review-g154943-d786663-Reviews-Miko_Sushi-Vancouver_British_Columbia.html
日本でお馴染みのカウンターのある、純粋なお寿司屋さん。もし間違いないお寿司が食べたい場合は、ここがおすすめ。
・Zakkushi on Denman
https://zakkushi.com/zakkushi/denman/
値段は張るが、日本の焼き鳥、刺身やおでん、そして日本酒が豊富に揃っている。
・Miku
https://mikurestaurant.com/
海外風に変換されたオシャレな日本食 Japanease Cuisine シーグラフの会場のコンベンションセンターより歩いて3分の好立地にある言わずと知れたバンクーバーの高級レストラン、予約はほぼ必須で値段は張るがミシュランにも認定された海外風の日本食ならここだろう。
・暖暮(ラーメン)
https://ramendanbo.com/our-menu-vancouver/
海外にも複数店舗を展開してる福岡の豚骨ラーメン屋さん。大人気で、ランチやディナータイムの行列は必須。オープンと同時に行けば、すんなり入れる事が多い。
・まるハチ(ラーメン)
https://maruhachi.ca/
バンクーバーは豚骨ベースのラーメン屋が多い中、この店では鶏ガラベースのダシで勝負の「究極濃厚白湯スープ」。麺は店内で手打ちされる自家製特注細ちぢれ麺。味玉子やチャーシュー、角煮などがトッピング可能で、替え玉もある。
・Gojiro(ラーメン)
https://ramengojiro.com/
バンクーバーでは唯一の、二郎系ラーメン屋さん。その食べ応えの重さは日本のラーメンにも引けを取らないほど。唐揚げが思いっきり乗ったラーメンは食べ応えしかないかもしれない。
〇バンクーバーでのスタジオ視察、VFX留学など
バンクーバーにはVFX分野で有名な学校が複数存在している。もし、バンクーバーを訪問し、映像留学に興味を持った読者の方は、現地で日本人スタッフがサポートしてくれる留学エージェントもあるので、相談してみると良いだろう。
詳細はこちら
※日本語対応可能だそう
このTeamoveでは、SIGGRAPH期間中にVFXツアーを企画しているという。定員に達するまで、会期ギリギリまで受けつけているそうなので、もしご興味をお持ちの方は要チェック!である。
また、今回初めてバンクーバーを訪問し、現地のVFX業界とのコネクションを持ちたい方や、将来バンクーバーへの留学を考えている方は、日本語でサポートや情報提供を得られるので便利だろう。
以上がSIGGRAPH2025、会場周辺、そして意外な見どころ情報である。
視察の準備や、現地でのガイドとしてお役に立てれば幸いである。